唱歌 ふるさと について

 

佐藤彰牧師(福島第一バプテスト教会牧師)の文章より

 

『今だから感慨深く歌える歌として、「ふるさと」があります。


家内は逆に、震災以降この歌を歌えなくなってしまいましたが…。


作詞は高野辰之さんで、明治9年長野県生まれのクリスチャンです。お姉さんが熱心なクリスチャンで、その影響で信仰を持たれたそうです。


高野さんは、東大で教鞭をとられた国文学者で、ふるさとは天の故郷を指しているともいわれます。

 

そういえば、3番の歌詞の「志を果たし、いつか故郷に帰らん」は、地上の旅路で使命を果たし終えた後、天の故郷に帰る人生を歌っているようにも見えます。

 

けれど今、私たちには「兎追いしかの山、小鮒釣りしかの川……夢は今もめぐりて、忘れがたきふるさと……雨に風につけても、思い出ずるふるさと」のフレーズが、気軽に口ずさめなくなりました。

 

こみ上げて来るが特別な思いがあります。こうして、故郷を失ってみると、さすがにふるさとの野山が、万感の思いをもって偲ばれます。

 

作曲も、熱心なクリスチャンであられた岡野貞一さんです。40年間、本郷中央教会で聖歌隊を指導ていたそうで、東京芸大の助教授であられたようです。

 

「ふるさと」のメロディーは、当時の讃美歌にヒントを得て作られたとのことですが、そのせいか、ひとしお侵入禁止の我が家や故郷を偲ばせるメロディーのように思えます。

 

こんな時だからこそ歌いたいこの「ふるさと」を、今しか歌えない涙色で染めてみたいです。

 

入ることのできない故郷を、やがて入る天の故郷と重ね合わせて、涙の向こう側に二つのふるさとを見て、切なく限りない哀愁と望郷の念を抱きながら。

 

うさぎ追いし かの山

小鮒つりし かの川

夢は 今も めぐりて、

忘れがたき ふるさと

 

いかにいます 父母 

つつがなしや 友垣(ともがき)

雨に風につけても

思い出ずる ふるさと

 

志を 果たして

いつの日にか 帰らん

山はあおき ふるさと

水は清き ふるさと』